TOP > バックナンバー > Vol.12 No.1 > 燃焼制御・機械学習
原田ら(1)は機械学習を応用してガソリンエンジンの着火遅れ時間の予測を試みた。着火遅れ時間の定義は点火指示信号から投入した燃料の10%が燃えるまでのクランク角とし、機械学習の入力値には、予測するサイクルの2サイクル前から当該サイクルの40°BTDCまでの筒内および吸排気ポートの圧力測定値を選んだ。予測結果と実験結果を比較したところ着火遅れ期間に相関をもつ入力が見つからず、予測に必要な情報が入力データに不足していることが分かった(図1)。そのため入力値の範囲を拡大して当該サイクルの10°BTDCまでの値を採用した結果、高い精度で予測することができた(図2)。点火時期を決める時点の情報からは精度のよい予測は難しいという結果が出たが、今後の研究で、実際の点火時期制御に応用できる成果が得られることを期待する。
西井ら(2)はディーゼルエンジンの着火遅れ期間の予測に、モデルパラメータの値が異なる着火遅れ期間予測モデルを複数個もち、ニューラルネットワーク(NN)が運転条件に応じて各モデルの予測値への重みを決める方式を提案した。提案手法の予測値は実験結果とよい一致を見せ、ほとんどのデータで誤差は10%以下だった(図3)。また、モデルパラメータを固定した手法、モデルパラメータをNNで出力する手法、およびNNのみによる予測結果と比較したところ、提案手法の予測精度が他の方式よりも優れていることが分かった(図4 図中のNWPが本研究の提案手法の誤差を示す)。ただし複数個用意した着火遅れ期間モデルの予測値の間の相関が高く、複数個用意したメリットを生かせていないことが分かったので、今後この点を改良していく。