水嶋ら(3-1)は規制強化に対するシステムを検討するため,微分方程式を入力すれば解を求めることができ,さらに各コンポーネントをつなぎ替えるだけで様々なシステムを検討できるModelica言語によるMBDに着目している.ここでは,これまでのモデルを基本に制御系を含めたエンジンシステムをモデル化してNOx生成量を実機と比較しているが,将来はエンジンと制御モデルの適合にはシャシダイナモを用いた車両実験を行いながら制御マップを適合させ,燃焼に関してもWiebe関数の定数をマップで同定することで,過渡運転で定常と異なる状況においても筒内ガス量や燃料噴射量から空気過剰率を求める手法を提案している.(図3-1)
市橋ら(3-2)は石油代替燃料として天然ガスがあり,熱効率と制御自由度の高さから注目されている軽油とのディーゼルデュアルフュエルエンジン(DFE)の制御モデルの構築を行っている.DFEはDE制御+天然ガスの調量のため制御操作量が多く,モデルベースト制御の適用が必要となる.そこで,モデルはIVC,着火時期などサイクルの代表点を物理式でつないだ離散化モデルとし,詳細度が必要な燃焼行程のみ1deg.CA毎の計算を行い,精度が不十分な燃焼期間予測についてはニューラルネットワークを用いて精度改善を行っている.(図3-2)
小祝ら(3-3)はGPF再生の際に温度が急上昇して破損することを防ぐために,補集されたPM量を正確に見積もることができる軽量な制御用のPM排出量モデルを作成した.このモデルは確率密度関数を用いて混合気の均質性および燃料付着をモデル化しており,4つの要素に分かれている.PMの主要因となる混合気の偏りを表現するための筒内燃料分布モデル,そのうち燃料噴射・気化・拡散プロセスを表現したモデル,冷機時のPM生成主要因である燃料の壁面への付着を表現したモデル,PMの反応を反応モデルからマッピングしたPM反応モデルからなる.本モデルを定常試験結果と比較したところ,暖気時で13%,冷機時で19%の誤差に収まった.(図3-3)(山川)