TOP > バックナンバー > Vol.13 No.7 > ガス燃料エンジンⅡ - カーボンニュートラル化技術 -
本セッションで発表された6件とも、水素エンジンに関する報告が含まれていたが、4件は欧州の研究機関からの発表であり、欧州において水素エンジンについての取り組みが活発になってきていることがわかる。また水素以外のカーボンニュートラル燃料として、エタノールやメタノールについても取組みの紹介があり、多種燃料に対応できるエンジンが求められていることがわかる。ここでは、水素エンジンの試験結果を解り易くまとめているTNOおよびFEVの報告を紹介する。
TNOのSeykensら(1)は、単気筒エンジンを用いてポート噴射・火花点火方式で水素燃焼試験を実施している。ここでは参考になる内容を3点紹介する。
正味平均有効圧力(BMEP)を変化させて空気過剰率(λ)に対するノッキング領域を調査している(図1)が、ノッキングを抑制するためには、BMEP=16barでもλを2.7まで希薄化する必要があり、高い過給圧力の得られる過給システムが必要となる。
またシリンダ内の発光強度の計測を実施している。図2に示す方向の発光履歴を計測した結果を図3に示す。ノッキング起因と思われる筒内圧力波形の振動の後のタイミングで、給気弁側(方向8,7,6)方向に強い発光信号が計測されており、給気弁側でノックが発生していることが示唆される興味深い結果である。
次に給気ポートに水噴射を行った場合の試験結果について図4に示す。水噴射によって同一NOxでの空気過剰率が低下しており、必要となる過給圧力を下げることが出来る。
本報告は水素エンジンにおける代表的な試験結果が解り易く説明されており、開発の参考となる。
FEVのThomas Durandら(2)は 、水素エンジンについての研究結果をいくつか紹介している。まずTNOと同様に水噴射を行った場合の試験結果を示している(図5)。水噴射を行わない場合は図示平均有効圧(IMEP)で18bar程度でノッキングが強く発生し、出力が制限されている。それに対し、水噴射を行うことでIMEP=26barまで高出力化が出来ており、水素エンジンにおける出力向上手段として水噴射が有効であることがわかる。また水素エンジンで発生しやすいプレイグニッションに対しては、シリンダ内の壁面温度の低減が必要であり、図6に示すような点火プラグ、排気弁、ピストンの温度低減が有効なことを示している。本報告も水素エンジンの開発には参考となる。
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