TOP > バックナンバー > Vol.13 No.7 > 持続可能な自動車社会の展望I
デンソー川野らは「カーエアコンの使用時におけるCO2排出量の2035年推計と提言」というタイトルで発表を行った。今後電気自動車(EV)が増加していくことは確実視される中で、ガソリン車であればいわば捨てる熱を使っていた暖房にもEVでは別途エネルギーが必要となるため、エアコン使用時のエネルギー消費率の変化が大きくなることが懸念される。その課題に対し、既存のエアコン使用時の燃費影響も含めてCO2排出量を推計するSAEのモデルに、EVの、とくに暖房使用時についてのCO2排出増加量として電気ヒータ式の場合とヒートポンプ式の場合のCO2増加量について実測値を元にモデルを追加している。計算結果をまとめたものとして、世界各地域のエアコンによる2020年および2035年のCO2排出量を示したのが図1である。基本として寒冷地割合が高い場合には、EVが増加するとCO2も増加するのに対して、欧米では発電によるCO2排出係数が低いことから、同等か減少傾向になる。また、この場合ヒートポンプ導入できれば、さらに大幅なCO2排出低減が可能となる。とくに欧州では米国と市場規模は同等ながら発電によるCO2係数が小さいためにこの効果が大きい。一方、中国では発電によるCO2排出係数が大きいため、EVの導入が進むものの、それがかえってCO2排出を増加させることにつながる。新興国では、暖房の需要が小さいため、ヒートポンプを導入しても効果が限られる、などのことが示された。将来EVが増加するとCO2排出がどうなっていくのか興味があるところ、エアコンによるCO2排出量を定量的に予測したことは大きな意味があるといえるだろう。
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