TOP > バックナンバー > Vol.13 No.7 > 先進ディーゼル機関技術Ⅱ
松田ら(1)は、燃料噴霧の混合気形成過程において、噴射された燃料液塊の分裂であるPrimary breakupに関し、実現象を表現できるモデルを構築することを目的とし、本報ではノズル内の壁面せん断乱流と乱れの減衰について解析した。壁面せん断乱流の速度や強度分布、減衰には参考文献中の実験式などを適用し、噴孔内の平均速度分布(図1)と乱流強度(図2)が得られた。噴孔入口部で生成した乱流強度が、減衰により噴孔の壁面で生成される乱流強度よりも小さくなった場合、乱流強度としては壁面乱流によるものが支配的である。本モデル解析による「流れ方向の距離/噴孔径」から計算できる壁面乱流により生成される壁面強度分布の平均値と最小値は、従来の研究による実測値と一致しており、モデルの妥当性を確認できた。
和田ら(2)は、エンジン制御に欠かす事の出来ないセンサを、機械学習のNeural Networkモデルに置き換え、重量増加、コスト高、レイアウトや劣化問題に対する解決策として検討した。今回は、インマニ温度の熱電対値の予測とECUへ演算ロジックの実装、他センサへの展開を構築した。演算速度0.1秒、入力パラメータ771、予測値と実測の誤差±5℃と、小規模で高精度なモデルを構築できた。さらに、過給器回転数の予測モデルへ応用も可能となった。インマニ温度計算は、時系列に出入りするエネルギーから算出するため、過去ステップの入力パラメータをNNの学習に用いた。使用する予測モデルの選定は、MLPとLSTM(表1)を取り上げた。その結果、LSTMでのリアルタイム予測精度は97%と高く、瞬時変化にも対応しており(図3)、走行パターンや環境条件の学習は必要であるもののロバスト性の高さを確認できた。この演算のECUへの実装には、演算処理の工夫で可能なことも分かった。
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