TOP > バックナンバー > Vol.13 No.7 > 先進ガソリン機関技術Ⅱ
才野ら(1)は冷間始動時の噴射燃料壁面付着量を予測する実験的手法を開発し、燃料付着量を予測する統計モデルを作成した。図1にエンジン回転速度、負荷、空燃比、油水温を変化させた場合の、モデル結果と実験値との比較を示す。およそ同一の傾向を示しているという。そして始動模擬運転において、噴射量最適制御を適用した結果を図2に示す。実線は噴射量最適制御を行い、破線はそれを行わず同一噴射量で50サイクル運転した場合のものである。最適制御の始動直後は付着分を補正するように燃料噴射量が増量され、サイクル経過後はストイキに維持するよう減量される。始動時の失火回避によりTHCスパイクが無くなり、その後もTHCとCOは抑制されるなど改善効果が示されていると報告があった。冷間始動時のエミッション低減は、重要な課題であり、さらなる進展と直噴エンジンでの検討も期待したい。
堀ら(2)は可変動弁機構を用いた、筒内状態量制御による冷間EMの低減を検討している。吸気行程に着目した手法は、すでに報告済で(3) (4)、今回排気行程に着目している。図3に示すように排気開弁時期遅角化(LEVO)により、THCの低減、排気ガス温度の上昇、燃費悪化が見受けられる。そのメカニズムとして、図4のEVO66(BDC後66degに排気開弁)では、再圧縮により筒内ガス温度が1200Kまで上昇しており、LEVOとすることで、後燃え促進が期待できる温度環境となっていると説明している。そして、さらなるEM改善のため、前報(3) (4)の吸気開弁時期遅角化(LIVO)とLEVOの組み合わせを検証している。図5にそのTHC実験結果を示す。LIVO+LEVOはLIVOの燃焼改善効果にLEVOの筒内での酸化促進効果が得られ、THCがBaseから60%低減したとしている。またPNもTHC同様にBaseから40%低減したと報告があった。可変動弁機構を上手く活用することで、冷間EM低減を行っている。
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