TOP > バックナンバー > Vol.13 No.7 > 先進ガソリン機関技術I
沈ら(1)は副室を持つ単気筒エンジンで実験を行った。実験装置の概観を図1に示す。副室内には燃料改質ガスを模擬したガスの噴射弁と点火プラグを備えている。副室の容積とノズルの寸法・形状を変化させて希薄燃焼における熱効率の向上とNOx排出量の低減効果を確認した結果、副室と主室の最大圧力差ΔPを大きくすることが主室の燃焼改善に有効であることを見出した。選定した副室仕様はスパイラル形状の噴口で、噴口径はジェットを強めるために絞り、副室容積を小さくしたものとなった。これに副室ジェットと干渉しにくいキャビティピストンを組み合わせてスワールを利用することでリーン限界をλ=3まで拡大し図示熱効率42%とNOx排出0.1ppm以下を実現できた(図2, 図3)。
桑原ら(2)は耐ノック性と燃焼安定性を向上させられる燃料設計への指針を得ることを目的に、図4に示す実験装置を用いて気体燃料をガソリンに添加してエンジンに供給しエンジン性能への効果を評価した。図5はレギュラーガソリンに添加した気体燃料の発熱量分率とノック限界の関係を示す。気体燃料としてエタン(C2H6)を添加したときのノック限界拡大効果はメタン(CH4)を添加したときよりも大きいことが分かる。これはエタンのRONがメタンのRONより小さいことと矛盾するが、OHを消費する反応の速度定数がエタンの方が大きいことによって説明できると考えた。気体燃料をレギュラーガソリン(上死点付近で冷炎反応の熱発生あり)とハイオク(同熱発生なし)のどちらに添加してもノック限界拡大効果が大きく変わらないことから、気体燃料のOH消費がノック限界拡大を支配しており未燃領域の冷炎反応生成物の減少は関与しないと考えられる。
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