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Vol.13 No.7

カーボンニュートラル社会に向けた潤滑技術
Lubrication Technology for Carbon-Neutral Society
川野 大輔
Daisuke KAWANO
大阪産業大学
Osaka Sangyo University

講演紹介(1)熱膨張を考慮した円筒ボア形状の改善提案

 日比ら(1)は、通常のボア形状を有する条件(Normal Bore)と、熱負荷の最も大きい定格条件で完全な円筒形状となる条件(Cylindrical Bore)でCAEによる評価比較を行った(図1)。これらのシリンダボア形状を適用した際のFMEPとピストンスラップによるNV評価を行った結果、いずれの運転条件においてもCylindrical BoreのFMEPはNormal Boreよりも低く、NV性能は双方で同等であることから、摩擦損失とピストンスラップの相反関係が改善されることがわかった(図2)。さらに、Cylindrical Boreによりブローバイ流量が低減し、LOCが改善する良好な結果が得られた。

講演紹介(2)ボア形状改善によるディーゼル機関の性能向上

 三田ら(2)は、第1報で良好な効果予測結果が得られたCylindrical Boreのシリンダブロックを実機関に適用し、その性能評価を行った。FMEPと騒音レベルを測定した結果、Normal BoreよりもCylindrical BoreのFMEPは定格条件で7.5kPa低減し、ピストンオフセットを無くす(PO-0ピストン)と9.3kPa低減した。騒音レベルも平均で0.6dB低減し、ピストンオフセットを無くしても悪化はほぼ生じなかった(図3)。また、Cylindrical Boreではブローバイ流量が15%低減し、LOCは3.0g/hr低減した。さらに、燃費性能については、新重量車燃費基準で1.6%低減し、ピストンオフセットを無くすことで2.7%の低減効果が得られた。

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【参考文献】
(1)日比 大雅、三田 拓朗、山下 健一:実働時のシリンダボア形状改善によるディーゼル機関の性能向上(第1報)-熱膨張を考慮した円筒ボア形状のCAEによる効果予測-、自動車技術会2023年春季大会学術講演会講演予稿集、No.20235072
(2)三田 拓朗、日比 大雅、山下 健一:実働時のシリンダボア形状改善によるディーゼル機関の性能向上(第2報)-円筒ボア形状が機関性能におよぼす影響-、自動車技術会2023年春季大会学術講演会講演予稿集、No.20235073