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TOP > バックナンバー > Vol.12 No.5 > 先進ガソリン機関技術Ⅱ・Ⅲ
工藤ら(1)は直噴ガソリンエンジンの重要課題である、冷間エミッション低減に関する研究を行った。可変動弁機構を用いて、筒内ガスの状態量を制御することで、液体燃料の蒸発を促進し、未燃炭化水素(THC)と排出微粒子数(PN)を低減することを目的としている。吸気開弁時期の遅角化(LIVO)により筒内圧力を下げることで、燃料の飽和温度を低下させ相対的に過熱状態をつくることや、合わせて排気閉弁時期を進角(NVO)することで、内部EGRを残留させるなどにより筒内状態量を制御している。その実験結果(油温、冷却水温35℃設定)を図1に示す。THC、PNが温間レベル(Tw=90℃)まで改善できている。NVOでは燃焼安定性の悪化と排気ガス温度低下を伴うため、冷間環境においてはLIVOの方がより有効な手段だという。またLIVOでは強い吸気流入が生じるため、筒内ガスの内部エネルギーを増大させ、高温化作用により加熱度を高める。さらに強い吸気流動中に燃料噴射を行うことで、微粒化を促進しながら壁面付着を低減できると報告があった。冷間エミッション低減に有効な知見である。
大畠ら(2)は吸気行程における多重放電とプレ点火の組み合わせによる点火性能の向上を図り、図2に示す二段燃焼支援コンセプトを考案した。プレ点火の単放電時期を変化させた結果を図3に示す。プレ点火有りの図示平均有効圧力(IMEPp)と排気HC濃度(THCp)の間に逆相関が見られる。プレ点火による部分燃焼が生じていると推測している。また-315[deg.ATDC]でのプレ点火によるIMEPpは、燃料噴射開始以前であるにもかかわらず、プレ点火無しのIMEPnよりも大きな値となっている。燃料噴射以前の多重放電によるプレ点火以外の効果を期待できるという。冷機始動を模擬した実エンジンの検証では、プレ点火無しのIMEPnと比べ、有りのIMEPpはサイクル変動が抑制され、変動率は17.3%から11.6%へ改善した。またHC排出量の低減効果も確認したと報告があった。メカニズム解明等、今後の進展を期待したい。
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