function gtag() { dataLayer.push(arguments); }
TOP > バックナンバー > Vol.12 No.5 > 先進ディーゼル機関技術
SIP革新的燃焼技術のディーゼル燃焼の中心となった二つの大学の研究室の研究を取り上げてみたい。
松田ら(1)は、「非定常ディーゼル噴霧における運動エネルギの変化過程」と題した講演を行った。図1に算出した噴霧濃度分布を示す。噴霧は下流に行くに従い液相濃度分布が低下していく様子が分かる。ノズル先端から噴霧軸方向に30-40mmにおける単位時間当たりに噴霧軸と垂直な任意の断面を通過するエネルギの平均値を図2に示す。噴孔から30-40㎜の領域において投入された運動エネルギのうち約0.7%が液滴群の運動エネルギ,約8%が噴霧内噴流の運動エネルギ、約0.007%が液滴の表面張力エネルギとなり、残りの91%が周囲流体の運動エネルギになることが分かる。この中で一番噴霧燃焼に重要と思われるのが、Gas in spray(噴霧内噴流の運動エネルギ)であり、これからζst(理論空燃比の何割の空気が着火までに導入されたか)を導き出せば噴霧燃焼の統一した指標となる可能性がある。今後の進展に期待したい。
高橋ら(2)は「赤外高速度サーモグラフィを用いたディーゼル噴霧火炎衝突による壁面熱伝達現象の調査」と題して講演を行った。火炎衝突壁面の表面粗さが熱伝導に与える影響を明確にするため、光学研磨あるいは砂摺り加工を施した石英壁面にクロム放射膜を蒸着し、定容容器内でディーゼル噴霧火炎を垂直に衝突させ解析を行った。図3に熱発生率、赤外放射強度、温度および熱流束の視野内平均値(実線)および最大値(破線)の時間変化を光学研磨(青)砂摺り壁面(赤)で比較して示す。
砂摺り壁面は高温な火炎の衝突直後の壁面近くへの滞留と広範囲での壁面熱伝達を助長する一方で、燃焼後半では近傍の乱れや速度の減衰を促し壁面熱伝達を抑制するのに対し、光学研磨壁面は火炎衝突による壁温上昇および熱流束増大を衝突淀み点近傍に局所化する一方で、燃焼後半では壁面近傍の乱れや速度を維持し壁面熱伝達を助長することを示している。実エンジンにおける冷却損失への壁面粗さの影響を考察するには、これらの時空間的挙動が相反する効果のバランスを考慮することが重要である。同時に実機においてはピストン表面に噴霧が付着し炭化層ができており、これの扱いをどうするかも大事であると思われる。今後の発展を期待する。
コメントを書く