TOP > バックナンバー > Vol.12 No.1 > 副室点火燃焼
副室点火は運転領域間で燃焼が両立しないことが従来の一つの課題である。大野らは(1)、複数の運転領域において燃焼改善効果がある、単一の副室点火仕様を選定する考え方を提案した。具体的には、①高速高負荷と中負荷域の両立に関しては高速高負荷領域に合わせた噴孔の絞り比と、噴孔向きの適正化、②リタード点火機能と燃焼期間短縮機能の両立については膨張行程で放電チャンネルを引き出すことが可能な下噴孔の設置が示された。副室仕様は表1に示す。リタード点火時の燃焼安定性の効果(LNV:サイクル中の最も低いIMEPの割合)と、中負荷域でのISFCの改善効果は、図1、2に示され、Spec.Eが両立した仕様であることを実証。各運転領域で生じる課題を明確にし、制御すべき制御因子を導出し、数値解析を用い改良する手法には注目すべきものがある。
石井らは(2)副室点火を用いた燃焼において、噴孔径が副室内のジェットの形成および主室予混合気の着火機構の及ぼす影響を、可視化副室(図1)を用いて解明した。①二次元可視化副室を用いた観察では、副室ジェット発生時には副室の大部分が燃焼、噴孔部では消炎せずに高温のガスが主室に噴射されることが示された(図2)②多噴孔副室を用いた観察では、噴孔径が小さい条件(Φ=1.6mm)では、主室内の予混合気を着火させる噴孔と着火させない噴孔があり、主室の着火の安定性が低下することが示された(図3)数値解析の結果から、噴孔径が小さい程、噴孔部でのガス温度が低くなることと、副室ジェットの高速化により副室ジェットの温度が低下したことが要因であると示唆された。今後、副室内の温度計測等更なる現象の把握が継続され、設計の指針が提示されることを期待する。