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宮尾ら(1)は火花点火誘起ブレイクダウン分光法(SIBS法)を用いて、副室式ガスエンジンの点火プラグ近傍の当量比の計測を行っている。図1のようにスパークプラグの中心電極に光ファイバを挿入し火花放電によって生じるプラズマからの発光スペクトルを計測している。図2に示す発光スペクトルの水素と酸素に対応する波長の発光強度の比を取ることで図3に示すように当量比との相関を得ることができる。本手法はスパークプラグの火花放電を活用し、必要な光学経路もスパークプラグ内に有していることから、エンジン側の特別な改造を必要とせずに、副室式ガスエンジンの点火において最も重要な副室内の当量比を計測できる画期的な手法である。副室式ガスエンジンの燃焼現象の解明と性能向上が本手法の適用で大きく進展することが期待される。
本田ら(2)はデュアルフューエルエンジンにバイオガスを使用した場合の燃焼改善についてエンジン試験を実施している。下水汚泥等をメタン発酵させて得られるバイオガスを想定しており、表1に示すようにメタンとCO2 を主成分とするものである。試験エンジンは少量のディーゼル油でガスに着火するマイクロパイロット着火方式を採用しており、試験においては吸気中にCO2 を混合させることでバイオガスを模擬している。CO2 は図1に示すように燃焼を抑制するため、熱効率が大幅に低下する。この燃焼悪化を回復するために着火用ディーゼル油の噴射時期と噴射量、空気過剰率、給気温度をそれぞれ変化させて、各パラメータの影響を把握し、最終的には図2に示すように、各改善アイテムを組み合わせてベースの天然ガス仕様と同等の性能を達成している。バイオガスの活用は脱炭素化の重要な打ち手の一つであり、本研究成果の適用によってバイオガスエンジンの性能向上と適用拡大が期待できる。