TOP > バックナンバー > Vol.12 No.1 > SI燃焼(1)(2)
細田ら(1)はSIエンジンにおける混合燃料の燃焼特性とリーン限界の関係性に関する検討を行い、以下の知見を得ている。リーン限界は運転サイクル内の一部のサイクルのIMEP低下により決定付けられることが多い。ノック回避の影響がなく、着火遅れ時間が同程度の燃料で有れば、層流燃焼速度が速い方がリーン限界は拡大させやすい。図1にサロゲート燃料(S5H)でのリーン限界時(λ=2.2)に各サイクルで得られた、層流燃焼速度SLに対するIMEPの値を示す。CA30~CA40の燃焼位相以降からSLとIMEPには、それ以前に無かった関係性が現れ、中~後期燃焼位相で燃焼速度が遅いサイクルではIMEPも低下している。また初期燃焼位相の遅角化とその影響を受けた中~後期燃焼位相のさらなる遅角化がIMEP低下の要因の一つであると報告があった。
松岡ら(2)はシミュレーションソフトHINOCAを用いたLES解析により、点火プラグ近傍の燃料濃度の変動や筒内流動の変動から、サイクル間の燃焼変動の要因を考察している。LIFによる実機確認結果を図2に示す。点火時期におけるプラグ近傍の当量比がサイクル毎に変動する様子が分る。この変動は実機におけるサイクル間燃焼変動挙動と同じ傾向であるという。またLESにより計算した14サイクル分の点火時期における燃焼室内の当量比分布(図3)でも、サイクル毎変動の様子が確認される。そして運転条件違いによる筒内流動の変動は、燃料濃度変動の傾向とは一致せず、サイクル間燃焼変動の主要因は、サイクル毎のプラグ近傍当量比の変動差と考えられるとしている。点火・火炎伝播を含めた今後の更なる現象解明による、サイクル間燃焼変動抑制の進展に期待したい。