function gtag() { dataLayer.push(arguments); }
TOP > バックナンバー > Vol.11 No.9 > 代替燃料
高橋ら(1)は「軽油早期噴射における天然ガスDDFエンジンの燃焼・排出ガス特性」と題した発表で、天然ガスと軽油のデュアルフューエルエンジンの燃焼モデルを構築し、筒内現象の解明と排ガス等への影響の解析を行っている。KIVA-4コードを用い、化学反応スキームにはディーゼルサロゲート機構にメタン、エタン、プロパン、ブタンの素反応を加えたモデルは、実験結果を良く再現した。このモデルを用いて単段噴射において燃料噴射時期を早期化したところ、燃焼開始時期も早期化していったが、燃料噴射時期を-35deg.ATDCよりも早期化しても燃焼開始時期は早期化しなかった(図1)。これは天然ガス燃焼形態が軽油による着火から軽油との予混合燃焼に変化したためであるとしている。また、2段噴射においても、噴射時期が遅い場合には部分的に当量比が濃い領域が存在していたが、早期化することで当量比が1を超える領域がほぼなくなり(図2)、低エミッション化に有効であることが示された。
渡邊ら(2)は「炭化水素系燃料によるスーパーリーンバーンエンジンのリーン限界拡大に関する研究(第2報)」と題した発表で,スーパーリーンバーンにおけるリーン限界を拡大し,熱効率を向上しうる燃料組成について検討を行っている。筆者らは前報(3)で,軽質でかつオレフィン分が多い炭化水素系サロゲート燃料を用いることでSIPガソリンサロゲート燃料(S5H)よりもリーン限界が拡大することを示していた。本報では製油所の基材(半製品)を用いて軽質でかつオレフィン分が多い「軽質ガソリン燃料」を作成し,生産時期における生産バランス等により生じる製油所基材の性状(沸点範囲やオレフィン分濃度)の振れ幅を考慮しても,リーン限界拡大特性が再現できることを示した(図3)。この結果より,製油所で大量生産できる可能性が見えたが,今回製造した軽質ガソリン燃料は現行ガソリン燃料と比べると蒸留性状が非常に軽質であるなど性状面の差が大きいことから,実際の市場導入に向けては,既販車への適合性も含めた確認が必要であるとしている.またリーン限界拡大の原因について考察するため軽質ガソリンサロゲート燃料とその構成物質について反応科学計算を実施している。その結果,燃焼後期であるCA90(燃焼割合90%)に近い条件を模擬したP=6.0MPa,T=900K条件における層流燃焼速度とリーン限界の間に相関があることを示している(図4)。一方で反応性の指標とされる1100K付近の着火遅れ時間や燃焼初期条件の層流燃焼速度とリーン限界との間に明確な相関は見られなかった。以上の結果より,軽質オレフィンによるリーン限界拡大は,分子構造の違いによる反応速度の増加に加えて軽質化(低分子量化)による物質移動の増加効果もある程度大きい可能性が示唆されるとしている。