4.1 自動車の大気環境影響と対策技術III(セッション番号42)
当セッションでは、実環境における自動車の排出物や燃費の評価手法に関する講演4件が行われた。その中で自動車技術総合機構交通安全環境研究所の鈴木らは、「RDE走行による実燃費評価の可能性検討(第2報)」というタイトルで発表を行った。以下にその概要を紹介する。
実際に路上を走行しているときの燃費(実燃費)は、シャシダイナモ上にてJC08モードやWLTCモードにより計測された燃費(認証値)から乖離しているのが普通で、実燃費は認証値よりも20~30%低いとされている。鈴木らは、2019年5月の第1報にて、直噴ターボガソリン車を用い、RDE(Real Driving Emissions)ルート走行時【図4-1】に得られる燃費(RDE燃費)が、実燃費を代替えできる可能性について検討した。その結果、RDE走行時の平均車速と燃費の関係は、一般的な実走行時の平均車速と燃費の関係と、高速走行時の一部を除いてよく一致しており、実燃費の相場的なものを十分表しうると報告している。続く本報では、近年国内で普及しているガソリン電気ハイブリット車(ハイブリット車)を用いて、同様の調査が試みられている。
ハイブリッド車では、減速時のエネルギー回生や、走行時の発電エネルギーの有効活用により、優れた燃費性能を得ることが可能となっている。ハイブリッド車の認証値と実燃費の乖離は、通常のガソリン車のそれより大きいとされており、本報の試験結果においても30%を超える差がみられた。
さらに、ハイブリッド車では、さまざまな因子の走行燃費に対する影響度も、通常のガソリン車と大きく異なると予想された。第1報の直噴ターボガソリン車は季節影響をほとんど受けなかったのに対し、本報で調査対象としたハイブリッド車では燃費への季節影響が大きく、データ採取時の走行距離を伸ばしてもその影響は緩和できなかった。この理由として、ハイブリッド車は、走行自体のために消費するエネルギーが従来のガソリン車と比べて少ないため、エアコン使用の影響が相対的に大きくなるとみられること、また、ハイブリッド車に搭載されているエコタイヤでは気温による転がり抵抗差が通常のタイヤより大きいこと、バッテリー温度を一定範囲内に抑える必要があることが考えられるとしている。さらに、ハイブリッド車のRDE燃費は、同一季節(気温が同等の条件)においては実燃費を概ね表しうるものの、一方で平均車速や加速度の違いでは説明できない実燃費との差が見られた【図4-2】。先述のとおり、ハイブリッド車では燃費を変動させる因子が多く、一度の試験で全体を代表する値を得ることは難しい結果となったと報告されている。
なお、本報のハイブリッド車での燃費評価ではバッテリーの充電状態(SOC)は測定できておらず、得られた燃費値には走行前後のSOC差による誤差があるものの、その影響度は最大4%程度であるとしている。(西川)