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Vol.13 No.7

燃料と燃焼でのCO2低減研究Ⅰ―AOIプロジェクト―
Research on Combination between Combustion and Fuel for CO2 Reduction (AOI) I -AOI Project-
飯島 晃良
Akira IIJIMA
本誌編集委員、日本大学
JSAE ER Editorial Committee / Nihon University

講演紹介

 本セッションでは、石油連盟と日本自動車工業会の共同研究プロジェクト(呼称AOIプロジェクト)の研究に関する5件の発表があった。その内訳は、全体概要1件、ガソリンエンジン燃焼関連3件、ディーゼルエンジン燃焼関連1件であった。
 日本自動車研究所の成毛らは、「燃料組成が多気筒ガソリンエンジンの燃焼安定性に及ぼす影響」と題して発表を行った。既往研究で示された、オレフィン成分が希薄限界、層流燃焼速度、火炎伸長などに影響を及ぼすことに着目した上で、そこに将来の利用を想定してバイオ燃料を混合した際の燃焼安定性を評価している。
 プレミアムガソリンの5成分サロゲートであるS5Hを基準燃料(Fuel 1)とし、そこに1-ヘキセン(オレフィン)を40 Vol.%混合した燃料(Fuel 2)、Fuel 2にエタノールを10 Vol.%混合した燃料(Fuel 3)、Fuel 2にETBEを 23Vol.%混合した燃料(Fuel 4)の4種類の燃料を用いて、EGR限界、希薄限界、ノック特性などを調査した。使用したエンジンは、圧縮比14、総排気量1490cm3の3気筒直噴自然吸気エンジンと、圧縮比10.4、総排気量1795cm3の4気筒ターボ過給エンジンである。EGR限界を調べた結果, オレフィンおよびエタノール混合燃料は希釈限界が伸びる傾向にあった(図1 (前刷の図1))。これは、オレフィンとエタノールが、層流燃焼速度がイソオクタンヤトルエンに比べて大きく、かつ分子量が小さいためルイス数が小さいため、消炎に対して安定であると考察されている。層流燃焼速度と分子量がイソオクタンと同等であるETBEを混合した場合には、そのような効果は認められなかった。なお、ノック抑制効果は、エタノールおよびETBEを混合した燃料で見られる(図2 (前刷の図5))。
 今後、燃料成分が希薄時の初期火炎形成、乱れの影響の受け方、層流燃焼速度、低温酸化反応、ノック特性など、SI機関の一連の現象に影響を及ぼす各因子に対して、それぞれどのような影響を及ぼしているかを総合的に理解することで、新しい燃料を高効率に仕事に変換するための燃焼技術の創出につながっていくものと期待される研究である。

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【参考文献】
(1)成毛 政貴、伊藤 貴之、燃料組成が多気筒ガソリンエンジンの燃焼安定性に及ぼす影響、自動車技術会2023年春季大会学術講演会講演予稿集、No.20235207