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第2日に2セッションで10件の発表があったEV・HEVシステムセッションでは、9件がHEVに関するもので、なかでもCセグメント以上の大きめの、形式の異なる3種類のHEV車両に関して、静粛性と加速時のエンジン動作の車らしさに拘った発表が三社で6件(他のセッションを含むと7件)あったのは興味深い。商品性追求までに進化したその概要と、新たな分野へのHEVを検討する手法に関する発表について紹介する。
長谷川ら(1)は、典型的なシリーズハイブリッドの図1中央のモードのSUV用のパワートレインについて紹介した。駆動はBEVに準じてモータのみで充分な、余裕のある大きさのモータを採用している。ターボ付きエンジンの採用によって、低回転数域からの発電を可能にしたことで、エンジン音が静粛となったが、更に、ロードノイズの少ない低車速域での発電を避けることで実用面で高い静粛性を確保している。速い発進加速や追い越し加速での発電時のエンジン回転数を、車速に沿って上げる制御でダイレクトな加速感を実現している。シンプルなHEVであるので、モータとエンジンの使用域の制限が少なくなったことによって、複雑な制御なしに効率化も図られている。
古畑ら(2)は、シリーズハイブリッドにエンジンと駆動軸をロックアップクラッチで直結する機能を設けた図2のHEVシステムについて実施したコンパクト化と高効率化について紹介した。エンジンはストイキ領域の拡大を図る種々の対策により、図3に示すように燃費良好な範囲を拡大した。本来、エンジン直結のエンジンドライブ時は、その回転数で効率最大になるよう に駆動モータでトルク吸収/アシストを実施して最大効率線をトレースする制御であったが、拡大した燃費良好範囲で電池のアシストや電池での吸収を抑える方向(電気系のロス低減)にエンジン動作点を各々シフトすることにより、直結モードでの効率を2.4%改善している。従来、発進加速や追い越し加速での発電時には、エンジンが最高効率点で動作するように制御されてきたため、加速初期から高い回転数に維持され、ドライバーの感覚に合わなかったが、この拡大された燃費良好範囲内でエンジントルクの増大(結果、エンジン回転数up)を繰り返す方法で、変速機によるエンジン回転数変化に似た感覚にマッチした加速状態を実現している(詳細は(2)参照)。
宮本ら(3)は、6速変速機付き2.4Lターボエンジンベースの図4に示す変則パラレルハイブリッドシステムについて紹介した。EV走行と、速度ゼロでの発電のためのクラッチをモータの両側に設けた構造(モータ出力側は半接続状態が必要なため湿式クラッチ)で、PCUとDC-DC変換器を前軸の駆動系に直接搭載することでコンパクト化を図っている。各モードのトルクと電力のフローを図5に示す。欧州の上位セグメントのHEVのように、十分な動力性能のICEVをHEVによってより高性能にしたと理解できる。ターボの遅れや変速ショックをモータでカバーするほか、メカで制震しきれない振動のモータによる制震や、高速・髙トルク状態での駆動系マウントからの振動低減などをHEVのモータで静粛化している。また、アクセルペダルからの要求に対して、フィードフォワード制御も取り入れることにより、髙レスポンスと自然なフィーリングを実現したとしている。
前述の3件は、いずれも長い経験の下に導かれた成果であるが、これに対し新たな組み合わせのHEVの成立性には的確なシミュレーションが有効である。水嶋ら(4)は、システムのエンジンへの依存度が高く、電動過給器の利用が一般的な低電圧マイルドハイブリッドについて、複合的な物理領域(マルチドメイン)で構成される系に有効なモデリング言語を利用したモデル化手法を提案し、シミュレーションによる性能解析の可能性について紹介した。既発表のエンジンサイクルモデルをベースにした過給器付きモデル、ISGモデルと車両モデルを作成し、WLTCモード試験の結果例(図6;この例では最終的に回生されるエネルギーが数%にとどまる)を紹介した。研究者が、提案する種々のシステムを容易に評価できることを期待してオープンソフトのModelicaを採用している。
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