function gtag() { dataLayer.push(arguments); }
TOP > バックナンバー > Vol.12 No.7 > 燃料噴霧の時空間的分配による双峰形部分予混合化ディーゼル燃焼の改善
燃料噴射を2段階に分割して1段目噴射により予混合化燃焼を行い、その直後に2段目噴射による混合律速燃焼を行うことで低騒音・高効率運転が可能となる双峰形部分予混合化ディーゼル燃焼が注目されているが、従来の燃焼室形状では1段目燃焼によって生じた高温・低酸素濃度の既燃焼領域に後続の2段目燃料噴霧が進入することによる黒煙の増加が課題として残されていた。そこで、燃焼室中段にリップを設けるとともに、ピストン位相を考慮して1段目燃料噴霧が燃焼室上部に、2段目燃料噴霧が燃焼室下部に分配される噴霧分配型燃焼室を考案し、三次元CFDによって混合気形成および燃焼特性を検討するとともに、実験により燃焼改善効果を実証した。
図1(動画)により、本研究で考案したピストン位相を考慮した2段噴射と上下噴霧分配型燃焼室による後続燃料噴霧の既燃・高温領域への進入回避法に対する基本的概念を示す。左の従来型燃焼室では、1段目噴霧による既燃焼領域に2段目噴霧が進入して黒煙の生成が避けられなくなる。一方、右の燃焼室中段にリップを設けた噴霧分配型燃焼室では、1段目噴霧が上部燃焼室内に進入するピストン位置となる噴射時期に設定することで、下部燃焼室に進入することなく上部燃焼室内で予混合化燃焼するとともに、2段目燃料噴射をピストンが上昇した上死点近傍で行うことで、比較的低温・高酸素濃度の下部燃焼室内で混合律速燃焼を行うことが可能となる。
Fig.1 燃焼室内当量比分布の推移
図1に示した気相当量比分布の推移(動画)について、図2に1段目噴射開始後5ºCAから15ºCAまで(左)、および2段目噴射開始後5ºCAから15ºCAまで(右)の画像を示す(4)。従来型燃焼室では、1段目噴射による燃料噴霧がリップに衝突後に燃焼室内に進入して燃焼室底部付近を中心に予混合気を形成し、それと同じ領域に2段目燃料噴霧が進入して高当量比の混合気が広範かつ長期間にわたって滞留している。一方、噴霧分配型燃焼室では、1段目噴霧は上部燃焼室に比較的希薄な予混合気を形成するとともに、二段目噴霧は1段目噴霧がほとんど分布していない燃焼室下部に進入しており、高当量比混合気の規模および滞留時間が減少している。
温度および酸素濃度分布の推移(4)図3に、図2と同一条件における2段目噴射開始からの温度(左)および酸素濃度(右)の各分布に対する推移を示す。両燃焼室とも2段目噴射開始時期(上死点)において、すでに1段目噴射による予混合化燃焼を生じており、従来型燃焼室ではリップ下部から燃焼室底部にかけての広い範囲に高温・低酸素領域が存在しているのに対し、噴霧分配型燃焼室の下部は比較的低温・高酸素となっている。その後、従来型燃焼室では2段目噴霧が1段目燃焼によって形成された既燃焼領域に進入して燃焼し、大規模な高温・低酸素領域を形成しているのに対し、噴霧分配型燃焼室では大部分が酸素が多く残留する下部燃焼室で燃焼し、高温・低酸素領域が縮小している。
実機実験による噴霧分配効果の実証(5)図4に、実験により得られた指圧線図、熱発生率、および排気黒煙を示す。双峰形部分予混合化燃焼は、予混合化燃焼主体の熱発生と混合律速燃焼による熱発生が生ずる点では通常ディーゼル燃焼と同様であるが、両熱発生が異なる位相で生ずるため、燃焼騒音を低く保ちつつ予混合化燃焼の割合を増加できる。その際、上下分配型燃焼室を用いて1段目噴射時期θ1stを上死点前35ºCAとすることにより、燃焼領域が空間的にも分離して2段目の燃焼が活発化するとともに黒煙排出を抑制できる。一方、θ1stを上死点前25ºCAとした際には、下部燃焼室にも1段目燃料噴霧が進入するため、従来型燃焼室と同様に黒煙が顕著に排出される結果となる。
双峰形部分予混合化ディーゼル燃焼は、予混合化燃焼と混合律速型燃焼が生ずる点では単段噴射の通常のディーゼル燃焼と同様であるが、各燃焼の熱発生の位相および量を任意に設定することが可能である点で大きく異なる。本提案は燃料噴霧ひいては混合気の空間的分配法であり、これを時間的に熱発生の制御を行う部分予混合化ディーゼル燃焼に適用することにより、燃焼の時空間的な制御が可能となることを実証できた。また、後続噴霧の高温・低酸素既燃焼領域への進入を回避することによる黒煙の低減と燃焼の促進に対する有効性が明らかになったことから、後のディーゼルエンジンの燃焼改善に対する一指針を示すことができたものと考えている。
コメントを書く