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戸塚ら(1)はガソリン機関の熱効率向上のため、空気過剰率が2.0を超えて希薄燃焼が可能な副室式燃焼技術の提案を行った。特長は副室内に燃料から改質した水素含有ガスを噴射するコンセプトであり、副室内も希薄燃焼させNOxを低く保ちながら、主室の希薄燃焼の安定化を狙う。
単気筒エンジンを用いた試験結果では、空気過剰率が2.5まで希薄燃焼限界が拡大し、ストイキ燃焼と比較すると、図示熱効率が9.3%向上、空気過剰率2.3付近ではNOxが0.5g/kWhに低減することが確認された。
今回の単気筒エンジン試験では純水素を用いているが、燃料から改質された実ガスの水素濃度は低いので、改質装置を加えて実ガス相当での効果検証と、システムとしてのエネルギー収支の検討を期待したい。
笠原ら(2)は、これまでの研究でDNN(Deep Neural Network)によりエンジン放射音からノッキングを判定する手法を提案している。既報の手法では①データ収集に多くの時間が必要なこと、②DNN訓練時のデータ収集時にエンジンが破損する恐れがあることが課題で、本報告では、限られた回転速度のデータを用いて幅広い回転速度に対応できるDNNを訓練する手法を提案した。
従来は、個々の回転速度に特化してDNNを訓練したのに対して、①回転速度の上下限データを用いて一つのDNNを訓練する②訓練データに含まれない回転速度でもノッキング音が分離できるようにデータ拡張を適用することにより、上下限から内挿される回転速度にてノック強度を評価できる可能性を示唆した。 車室内でのノッキング音を模擬できる可能性等に言及しており、今後の発展性を期待したい。