TOP > バックナンバー > Vol.11 No.7 > 持続可能な自動車社会の展望
大聖(1)は「自動車用動力システム・燃焼・エネルギーにおけるカーボンニュートラルの将来可能性」と題する講演の中で、これまでのエンジン車の低燃費技術の振り返りから、各種電動車の開発・普及状況まで広範な情報について取りまとめ、2050年に向けたCO2排出量削減技術の想定を行っている。エンジン車の低燃費技術としてはSIP「革新的燃焼技術」の成果としてガソリン・ディーゼル各々の燃焼技術に加え、米国のCo-Optimaや欧州のEAGLEプロジェクトの紹介があった。電動車については、エンジン車の新車販売禁止の動向紹介に続き、電源を含むライフサイクルでの評価(図1)が重要なことや、車載バッテリのシェアの偏在を例に資源の偏在リスクを説明し、電力システムと連動したバッテリのリユース・リサイクルについて解説している。また将来の低炭素化のためには電力と水素をうまく組み合わせる必要がある(図2)とし、その活用の一形態としてe-fuelの説明もしている(図3)。最後に2030年から2050年に向けたCO2排出削減に寄与する技術として、①エンジンの高効率化、②電力と燃料の低炭素化、③電動化技術の適用拡大、④車両の軽量化を挙げている。
田邊ら(2)は「リアルワールドの走行条件を考慮した走行ルートの指標化の検討とその指標を用いた各種パワートレーンの性能評価(第2報)」と題する講演の中で、リアルワールドにおける走行ルートの特徴を指標化することで走行パターンが燃費に及ぼす影響を整理することを試みている。著者らは第1報において、大型トラックの高速道路走行を対象に走行ルートの特徴を指標化して燃費を表現する手法を検討しており、最も燃費に及ぼす因子として標高変化に着目して「ルート指標」を提案していた。この第2報ではその手法を拡張して市街地走行パターンへの対応を検討している。市街地における加減速を一定車速での位置エネルギー変化と等価としてルート指標を拡張させている。この拡張ルート指標と二乗平均平方根車速(RMS車速)を組み合わせることで代表的な走行モードを分類し、リアルワールドでの素行パターンとの比較を試みている(図4)。このルート指標とRMS車速を用いることでそのルートを走行するために必要なエネルギーが分かることから、HEVにおいて必要なバッテリ容量を決めることができるとしている(図5)。
Manabu WATANABE (JSAE ER Editorial Committee / ENEOS Corporation)