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Vol.11 No.7

先進ガソリン機関技術 II
大西 浩二(本誌編集委員、日立Astemo(株)) 

Koji ONISHI (JSAE ER Editorial Committee / Hitachi Astemo, Ltd.)

 本セッションではエンジンからの微粒子排出に関する講演が複数あった。技術的なアプローチ手法はすす生成のシミュレーション、吸気系の部品加熱、直噴インジェクタの設計仕様などそれぞれ異なるが、実使用環境における排出量規制への対応が動機となり、冷間始動直後に排出される微粒子の低減に着目しているところが共通している。その中から2件の講演の内容を報告する。

講演紹介(1)

 加藤ら(1)は筒内直噴エンジンのすす排出低減を目的とした燃料噴射系の開発手法について講演した。具体的にはインジェクタのTip-wetに起因するTip-sootの低減と、ピストン冠面およびライナへの燃料付着に影響する噴霧パターンを取り上げた。Tip-sootについては各種の運転条件がPNドリフトに及ぼす影響を明らかにしてインジェクタのエージング条件を決定し、噴口内部流路の最適化と段付き噴口を組み合わせた改良インジェクタでベースに比べてPNを48%低減した(図1)。噴霧パターンについては等流量分配6孔のベースパターンとピストン方向の噴口流量を減らした2種類のパターンを比較し、暖機後と低水温では噴霧パターンのPNへの影響が異なるため冷間時専用の噴射制御が必要であるとの結論を得た(図2)。

講演紹介(2)

 田中ら(2)はポート噴射エンジンの暖機途中におけるすす排出量を低減するため、吸気ポート周辺部位を加熱して燃料液滴と液膜を蒸発させる手法を試みた。加熱対象の候補として燃料、吸入空気、吸気ポート壁面、吸気バルブを挙げて(図3)燃料挙動をシミュレーションした結果、燃料と吸気ポートを加熱したときの燃料の蒸発効果が高かったため、そのふたつを採用してエンジン試験を行った。エンジン水温-7℃でのエンジン試験の結果をRDEに適合した0℃始動の実車走行モードに当てはめてすす低減効果を推定したところ、燃料加熱の方がポート加熱より電力消費に伴う燃料消費に対するすす低減効果が大きく、燃料温度を60℃まで上げることですすの発生を40%低減できた(図4)。

【参考文献】
(1) 加藤 真亮、中山 智裕、桂 拓未、塚本 卓磨:定常過渡におけるPM/PN排出低減に向けた燃料噴射系の開発、自動車技術会2021年春季大会学術講演会講演予稿集、No.20215010
(2) 田中 直之、久保田 俊一、村田 祐一郎、森本 達也、青木 健:RDE規制に対応したすす排出量低減のための吸気ポート噴射システムの加熱技術、2021春季大会学術講演会講演予稿集、No.20215009