TOP > バックナンバー > Vol.11 No.2 > 10 後処理技術(2)
上山ら(10-1)はディーゼル機関のNOx浄化技術である、尿素水を用いた選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction, SCR)上の反応として、NO2/NOx比が0.5のFast SCR反応モデル構築に関する研究を報告した。まず、Cu-chabazite触媒のFast SCR定常条件下において、150~550℃の範囲でTPDによりNO、NO2成分の浄化率を確認したところ、NOとNO2の反応量比は1:1となるはずだが、実際にはNO2の方が多く消費されていることが判明した。そこで、NO2存在下で実検証に基づいて反応経路を検討し、図10-1に示す四つの反応経路、①、②:NO2吸着によって形成された亜硝酸塩、硝酸塩を起点とする経路、③:吸着NH3を経由した経路、④:硝酸アンモニウム(NH4NO3)の生成を経由する経路をまとめた。さらに、これらの反応経路の影響が温度とともに変化することを示し、低温(約200℃)ではすべての反応経路がNOx浄化に関与し、高温(300℃以上)ではNH3の表面被覆率の低下により①から始まる反応経路が支配的と推測した。以上の条件を元にFast SCR反応モデルを構築し、150〜400°Cの温度範囲でのNOx浄化率とN2O生成の挙動を正確に説明できる反応モデルを提示した(図10-2)。