TOP > バックナンバー > Vol.11 No.2 > 6 計測診断
出島ら(6-1)はMEMS(Micro-Electro-Mechanical System)技術を用いた熱流束センサにより燃焼室壁面の熱流束計測を行うとともに、その結果などから熱伝達率や、レイノルズ数とヌセルト数の関係などを求めている。ストイキ燃焼のSI機関における熱流束測定計測結果として瞬時熱流束の存在確率分布を図6-1に示す。燃焼時である左(a)では、線で示したアンサンブル平均の2倍以上の値をとるケースも見られる。一方、モータリングの右(b)の場合、平均の圧力や熱流束はほぼ一定であるにもかかわらず、大きく変動している。局所の流速や温度場には乱れがあり、それがこのような熱流束の変動をもたらしていると考えられる。
また、それらの結果を用いてヌセルト数とレイノルズ数の関係を求めたところ、約0.4乗に比例する結果となり、壁面の熱伝達が乱流よりも層流熱伝達に近いと示唆された。
フーリエ変換型赤外分光計(FTIR)は多成分を同時に計測できるものの、THCを直接求めることはできない。それに対して藪下ら(6-2)は、過去の研究で主要成分濃度等からTHCを推計する手法が提案されているのに対し、赤外吸収スペクトル全体から機械学習することにより推定する手法を提案している。その際、精度向上のため、メタンやトルエン、水やCO2など単成分のスペクトルを学習させている。水など単体のみのスペクトルがTHC=0ppmであることを学習しておかないと精度が低下するためである。それらを用いた試験結果を図6-2に示す。全体としてFIDによる測定結果とよく一致しているが、一部で6%ほど過小評価している。これは学習に用いた試験条件よりもトルエン比率が高いなどHC組成が大きく異なるためであった。ただ、試験サイクル相当の運転では、エンジン出口における誤差がいずれも5%以下で、学習データの取得条件改善でさらに改善できるとしている。