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直噴ガソリンエンジンの冷間始動時に排出される粒子状物質の生成には、噴射された燃料が燃焼室の壁面に衝突して液膜を形成することが大きく影響する。この現象の解明に取り組んだ発表を2件紹介する。
松田ら(1)は図1に示す実験装置を用いて壁面に衝突させた燃料噴霧が液膜を形成する過程を観察した。液膜形成過程に及ぼす噴霧の変化と壁面の変化の影響を分離するため、燃料温度は一定にして壁面温度だけを変化させて実験を行った。図2は燃料温度が297Kのときの液膜付着量の時間変化を示す。壁面温度Twが低いほど付着量は小さくなっており、壁面温度によって決まる液膜の温度が低いと燃料物性の変化により飛散量が増加することが原因と考えられる。
運転中のエンジンではインジェクタとピストン冠面との距離が常に変化する。安達ら(2)はこの変化を模擬するために図3に示す実験装置を構築し、ノズルと燃料付着壁面の距離Zwを変化させて実験を行った。図4はZwを14㎜から57㎜まで変化させたときの壁面の液膜厚さを示す。Zwが大きいほど付着面積は大きい。また壁面温度を下げると、液膜厚さが小さくなる。
これらの発表に対して会場からは燃圧やノズル仕様の影響や筒内流動を考慮した解析に期待する声が寄せられた。
将来のカーボンニュートラルに向けて各種の合成燃料の開発が進められている。合成液体燃料の例を図5に示す。これらの燃料の実用化にあたっては自動車用燃料としての適合性が求められる。岡本ら(3)は国内外からガソリン系6種とディーゼル系4種の燃料を調達してその性状を調査した。表1と表2は、それぞれガソリン系とディーゼル系のJIS規格の試験結果を示す。いくつかの項目で現行燃料規格に適合していない燃料がある。
いわゆるドロップイン燃料といえども既存のガソリンやディーゼル燃料に置き換わるためには現在走行している車に用いてもエンジン性能や部品の耐久性に問題を生じないことが必須であり、その規格化にあたっては慎重な判断が求められる。そのためにも今回の発表のような取り組みが継続して行われることに期待する。
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