TOP > バックナンバー > Vol.11 No.7 > xEV技術 I・III
xEVの3セッションでは、汎用電動駆動ユニット関連(独からの4件)、HEV関連(2件)、生産/開発手法など車両に関するものに加えて、3件の磁気結合方式の走行中給電に関する発表があった(一方、独立した走行中給電/充電の2セッションでは、接触式やオフロード関連の発表が目立った)。ここでは、様々な利用形態が検討されているこの磁気結合方式に関する発表と、車載電池の劣化度合いを稼働データから把握する発表について紹介する。
磁気結合方式の非接触充電は車両のクラス分けに対応して給・受電部のクラス分けがなされているが、設備の有効利用の観点から、大きな車両用の給電設備を設置し小クラスの車両が利用することも検討されている。市中の信号の手前を中心にこの方式をワイヤレス給電設備(DWPT, Dynamic Wireless Power Transfer)として設置し、種々の電動車両に補充電する方法も検討されている。両者とも電池保護の観点からも受電電力を車両側が制御することが必須であるが、小電力時の効率低下や、給・受電コイルの相対位置変化による影響など検討すべき課題も多い。二つの組織の共同研究の2件の関連する発表を紹介する。
津下ら(1)は、前述の受電側で受電電力を制御する際の方法について、シミュレーションと、実走行模擬ベンチでの検討結果を述べた。図1の模擬ベンチに示すように、路面に埋め込まれた送電コイルの上を一定の高さを保って車両側の受電コイルが通過する際に車両側に給電されるが、その受電電力を車両側の整流部分に付与したインバータで制御する(車載の追加要素が少ない方法)際に制御性で優位と考えられるパルス幅変調(PWM, 図2参照)について検討した。ベンチでの40km/hでの結果(図3)から良好な制御性が確認できるが、小電力で効率が低下するほか、解決すべき課題も明らかになったとしている。
前述のパルス幅変調は、受電電流が流れている状態でON/OFFするためスイッチングロスが無視できない。永井ら(2)は、この欠点のない電流がゼロの状態でのみON/OFFするパルス密度変調(PDM)について、連続したパルス列でのON/OFF(集中型)と半波毎のON/OFF(分散型)について、その欠点である脈動に注目した検討を前述のベンチで行った(図4)。40km/hでの試験結果(図5)から集中型が脈動が少ないが、損失や磁歪ノイズが大きい欠点がある一方、分散型の脈動の原因が電流値ゼロの検出精度の低さにあることが判明したので、この精度向上が今後まず検討すべき課題であるとしている。動的な特性を繰り返し精度良く把握できるベンチにより、詳細な検討を可能にしている点は興味深い。
電動車両の駆動電池は、通常、BMS(Battery Management System)によって監視/制御されるが、様々な使用環境下での劣化を含めた電池状態を精度良く把握することは難しい課題の一つである。
丸地ら(3)は、電力レベリング用電池(HEVと同様、小刻みな充電で狭いSOC範囲で使用)で利用されている稼働中の電池のSoH(State of Health、劣化度合い)推定手法に対応した、満充電後に深い放電まで使用するBEV用電池(サイクルサービス電池)用の推定手法を述べた。充電とその直後の走行による放電ペアのQ(電気量)-V(電池電圧)プロットとその特定SOC範囲の頻度分布は図6右のようになるが、劣化度の異なる電池の充電/パターン放電試験結果等から、平均充電電圧と平均放電電圧の差が劣化と相関が高いことを示した(電力レベリング用では頻度分布の分散値がSoHの指標(同図左参照))。図7は、稼働中の電動バスの電池の5秒毎に収集された電圧、電流、温度とQデータを基に求めたSoHの推測結果(1週間毎の平均値)で、まだ110000km走行で劣化が見られないが、今後、実証を継続するとしている。電池のインピーダンスをモニタする観点からは収集間隔や単に時間平均している点が気になるが、負荷環境の変化が少ないバス故に簡略化が可能であるのかは興味深い。
Kenichi SHIMIZU (JSAE ER Editorial Committee / Waseda University)